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インタビュー内容紹介

"Another Try! 〜東大女子の浪人体験記〜"第21回は文科3類2年のYさんにお話を伺いました。

都道府県:

東京都

高校:

公立・非中高一貫

名前:

Y

学部:

文科3類

学年:

2年

"Another Try! 〜東大女子の浪人体験記〜"第21回は文科3類2年のYさんにお話を伺いました。

一念発起して浪人を決意

ー浪人しようと決めたとき、どんな状況でしたか?

東大は落ちていたんですが、私大には受かっていたので私はそこでいいやと思っていました。逆に家族が「いや、それはもったいない」と言ってきて、浪人するかどうか家族と揉めました。

ーYさん自身は浪人する気はなかったんですね!?

そうなんです。受験勉強が辛すぎて疲れていたから「もうやめたい」と感じていて。試験の1週間前くらいから、眠れないしご飯も食べられなくなっていて。テンションもだだ下がりで「入試早く終わってほしい」とずっと思っていました。試験に行く前から自暴自棄になっていて。数学が苦手で案の定全然できなくて、受験後の感触がゼロで「これは絶対落ちたな」と思いました。「もう私大でいいや」と自分を納得させようとしていました。家族に浪人を勧められても「いやもういいから」となげやりになっていたんです。

ーそれでもYさんなりに考え直したんですね?

やっぱり大学受験を頑張りきれてない自分が嫌でした。例えば、頑張って落ちてめっちゃ泣いてっていうのを自分では高2くらいのときに想像していました。受験はそういうものだと思っていました。でも、自分の受験番号がないのを見て「だよねー」とある意味納得してしまって。めっちゃ頑張って、結果はどっちでもいいけど、めっちゃ泣く、みたいなそういう時間が欲しかったんです。「こんな感じで大学生活始めても感じ悪いし」とも思って浪人を決めました。

ー私大への未練はなかったのですか?

浪人を決めた時点で、私には私大進学が良いものに見えなくなりました。「私大に行った人たちよりも良い大学生活を送ってやる!」という闘志がわきあがってきて、羨ましいと思わなくなりました。

ー周りに浪人する人はいましたか?

高校では東大志望は浪人する人が多かったです。でも女子は少なくて。もう1年頑張れば東大に行けるはずの子が、諦めて実力より低い大学に行ってしまうケースもあったし、「全部落ちたから」という消極的な理由で仕方なく浪人している子もいました。やっぱり男子より浪人を選ぶ女子は少ないことは肌で感じていました。

納得できるような「頑張る自分」へ

ー予備校通いはどんな感じでしたか?

時間割が学校みたいにあるし、授業を受けたら夕方になっていて、予習して復習して……というように過ごしていました。ダラダラしちゃうとか、何をやったらいいか分からない、みたいなことはありませんでした。ただひたすら東大合格に向けて頑張って勉強していました。

ー浪人中にしんどくなったことはありましたか?

現役で東大に受かった人たちがLINEの「ひとこと」に東大のクラスとかを書き込んでいるのを見て辛くなったことがあります。そういうのは見たくなかったので、その人たちを非表示にしていたら、表示される友達が19人くらいになりました笑。LINE以外のSNSはやっていなかったのでそれ以上苦しむことはなく、かえって良かったと思っています。

ー勉強に集中するためにスマホやSNSを断つ人もいるくらいですからね。時には強い意志も必要ですね。東大志望への気持ちはどう保っていましたか?

本郷の予備校に通っていて、五月祭(注1)のときは東大(注2)の方を見ながら「あー現役生は楽しんでるんだろうな」と嫉妬したこともありました。でもちょうど、予備校までに「本郷まで1km」っていう道路標識があって、それを見ながら毎日「あと1kmだ〜」と思いながらやってましたよ。

注1:東大では例年、五月祭(5月)と駒場祭(11月)の2つの学園祭が行われている。

注2:東大にはいくつかキャンパスがあり、主要キャンパスの一つが本郷キャンパス。

ーLINEの友達をほとんど非表示にしたとお話ししていましたが、予備校で新しい友達をつくりましたか?

私はおしゃべりが好きな性格なので、あえて交流の幅は狭くして、4人くらいしか友達をつくりませんでした。いつも一緒に席も座るし、お昼も一緒に食べるし、くらいの感じで。

ー予備校の友達とはどんな関係だったのですか?

偶然皆違う科類を志望していたのもあって、お互い良きライバルでした。おしゃべり以外にも真面目に教え合うこともありました。例えば私が得意な世界史を教えることで、「得意だから負けられない」と思えたし、教えながら自分の勉強法を見直せました。全員英語が得意だったから、高度な質問を語り合ったりとか。休み時間とかも勉強しながら質問し合うとか。数学はみんなが苦手だったから、自分の得意—苦手度合いとか、苦手なりにどういうふうに点をとっていったらいいのかとか、指標が分かりやすい存在でした。

たくさん書き込みをした世界史の教科書

ー勉強面でスランプはありましたか?

マーク模試が苦手で、最後の11月くらいの模試で、古文が50点中17点で、絶望しました。頑張って勉強しているのに結果に反映されない悲しさがありました。入試直前になってもできなくてプレッシャーに押しつぶされそうでした。 あとは、私大受験のときも焦っていました。「浪人はセンター試験利用で合格をとれる!」みたいな風潮があって、私もそのまま慢心していました。その結果、センター試験利用で合格した大学もあるけど、第一志望はダメだったんです。勉強しなきゃいけない状況になっていたのに、実際勉強していないし「私大やばいんじゃないか」と本当に焦りました。

ーそんなとき、どうやって気持ちを落ち着けていましたか?

自分を悲劇のヒロインみたいに捉えていました笑。普通に泣いていたときもあったんですけど、「あぁこれで東大に受かったらめっちゃかっこいいじゃん」みたいに思い直していました。

ー独特で面白いですね笑

ー東大の二次試験の感触はどうでしたか?

試験前は、「落ち着けばいける」と思っていたんですけど、実際受けてみて、全部微妙が続いたというか。第一科目終わって、「まぁめっちゃできたっていうわけではないけど他で挽回できる」みたいに思ってて。第二科目もそういう感じが続いて。最後の科目が英語でした。「英語は得意だから、そこで巻き返せばいける!」というところまできていたのに、大して巻き返せなくて。「全科目めっちゃ微妙だし、やばいな」という感じでした。結果発表までの一週間くらいはずっと「あの科目、何点は堅いだろうな」とかずっと考えていました。

ー2回目の東大受験で、Yさんが目指していた「頑張る自分」は達成できましたか?

はい、できました。受験後、「ダメだったかもしれない」って思った瞬間に涙が出てきて、本当に頑張れたと思いました。

浪人してまで入って良かったと思える東大

ー東大に入って良かったことはありますか?

いろんなことを学べる、というのは想像してたより良かったです。

ー教養学部前期課程(注3)ですね。Yさんは何を学びましたか?

理系の生物関連の授業は、他の文系の人は触れる機会もないだろうし、私には興味深い話もありました。教養だから気楽に学べて「知って面白い!」程度だったけど良かったです。 一方、「将来役に立ちそう」という理由で経済学に興味を持っていた時期もあったけど、経済の授業をとったら本当に難しくて。「あ、これはやらなくて良かったんだな」っていうのに気づけました笑。

注3:東大では1・2年生は教養学部に所属し、文理隔てなく勉強する。3年生からは志望する学部学科に進学するが、教養学部に進学すると教養学部後期課程となる。これは東大独特の「進学選択制度」と呼ばれるものである。詳しくはこちら

ー自分が行きたいところに気づけて良かったですね笑

英語のクラスとか必修ではない授業で、理系の人、法学部や経済学部志望の人など(注4)と一緒に受けられるのは友達の幅が広がりますし多様な意見を吸収できて面白いです。

注4:文科3類は例年、文/教養/教育学部への進学者が多く、文科1・2類はそれぞれ法学部・経済学部への進学者が多いため。

もう一つ、東大のいいところで、全員が受験していることもあげられます。私は個人的に私立学校のエスカレーター式に抵抗があって。もともとあるそのコミュニティに自分が入れるのか不安でした。そういうのが東大にはなさそうですし、開放感があると思います。

メッセージ

ー最後にメッセージをどうぞ。

東大は本当に楽しいですよ。思ったより全然普通の人が多いけれど、それでも楽しい。地方から来ている人も多いから、いろんな話が聞けます。浪人は意志さえあれば全然乗り切れるし、入学後も現浪関係なく楽しいし、浪人経験は話題のネタになるくらい笑。現役の子に「私、二十歳だから〜」って。それに乗ってくれる人も多いし、浪人経験者と「私浪人してたんだ〜」みたいにつながりが生まれることもあります。浪人は、抵抗でも悪い経験でもなくて、自分で語れる人生経験になります。応援しています。