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推薦入試合格体験記①

こんにちは。M.Hと申します。
私は、関西の女子校出身で、学校推薦型選抜にて農学部に合格し、現在は、教養学部理科二類の1年生です。

皆さんは、東大の学校推薦型選抜(以下、推薦入試)と聞くとどのようなイメージを持つでしょうか。
この制度は始まってからから8年しか経っておらず、受験の際の情報収集にはかなり苦慮しましたし、入学後も、周囲の認識との齟齬にもどかしさを感じることもあります。

例えば、学校推薦型選抜受験の流れや推薦生の受験生活が知られていない故、受験生活が一般生と全く異なる受験生活を送ってきたと認識されることもありました。
学部毎に求められる人物像は異なっているにも関わらず、「推薦生=学術オリンピックで高い成績を残した人」というイメージで一括りにされる場合も多いと感じています。
また、進振りに参加しないことばかりが強調され、羨望の目を向けられることもあります。

そこで今回はこの場をお借りして、私が推薦入試を受験することに決めた経緯や受験生活、 入学後の過ごし方についてご紹介したいと思います。
推薦生の経験・大学での過ごし方は、本当に多様でこちらは一例にしかすぎませんが、推薦入試に少しでも関心を持っていただけると幸いです。

<推薦入試を受験した経緯>

私は、小学校で読んだ本や中学校での生物の授業を機に、「環境微生物学」という分野から、地球環境問題の解明・解決に関する研究に携わりたいと考えるようになりました。
また、インターネットで大学や研究室情報を集めたり、本を読んだりするなかで、自分の興味のあることを具体化していきました。
同時に、科学の世界に触れ、研究のノウハウを学びたいと思い、大阪大学が主催する高大接続プログラムに参加しました。
本プログラム内では、大学の講義を受けたり、ディスカッションやレポート課題に取り組んだり、研究活動を行ったりしました。
また、各活動を通して学んだことや自主的に調べたことを蓄積したファイルを作成していました。
受講当時は(東大に限らず)推薦入試を見据えていませんでしたが、この期間の学び・ 経験は、あらゆる場面でかなり役立ちました。

高校2年生の秋頃、東京大学の教育システムや東大農学部の学部ポリシー、研究内容に惹かれ、理科二類を目指すことを決めました。
また、大学パンフレットの推薦入試案内を読んだとき、入学直後から専門的な学びや経験に触れることができること、入試には高い実績が絶対条件ではないことを知りました。
後者に関しては半信半疑でしたが、前年度の入試要項に掲載されていた農学部の求める人材像に自分との共通点を見つけ、自分の経験を何らかの形で活かすことができるなら挑戦してみようかな、という気持ちになりました。

一方、高校で情報が蓄積されていなかったこと、面接入試が大の苦手だったことから、かなり躊躇していた時期もありました。
しかし、合否に関わらず、推薦入試の準備自体が今後の重要な経験になると考え、推薦入試の受験へ向けて準備を始めました。

<受験生活>

東大の一般入試と推薦入試の対策を並行して行うことは、想像以上にハードでした。
推薦入試の準備は、研究内容をまとめた論文の作成と諸々の資料作成がメインです。
文章を書くことを苦に感じなかった私にとって、これらの作業は勉強の息抜きになり得た一方、一般入試対策に費やすことのできる時間とエネルギーが相対的に減ってしまうことに対し、常に危機感を抱いていました。
そこで、私が意識したことは以下の3点です。

      
  1. 推薦入試の準備は時間を決めて、高校が休みの日の勉強の合間に行う
  2.   
  3. 基本的な問題演習や単語・ (共通テストのみの)社会科目暗記は休み時間などの隙間時間に済ませ、東大2次演習のためのまとまった時間を確保できるようにする
  4.   
  5. 論文を含め、提出書類はより多くの高校の先生に添削していただき、客観的な視点に基づいた修正を行うことで、効率的に書類の質を上げる(1人で悶々と向き合っていても、なかなか進展しなかった経験があるため)

また、面接対策も同様、高校の先生から多くのアドバイスを頂き、苦手意識を払拭させていくようにしていました。
脳内の自分の考えを言語化して他人に伝えることに時間がかかってしまっていた私にとって最も有効だった方法をご紹介します。

  1. 自分で質問を考え、それに対する回答を文章として書く。
  2. 上記の回答に具体例や詳細情報を付与していく。
  3. 1,2で作成した文章をまずは、スラスラ話すことができるようにする。
  4. 各回答のキーワードを抽出した上で、視点を変えた質問を行い、その場で文章を組み立てられるようにする。

書類提出が終了し、書類審査通過を経て東京へ発つまで、これらの作業を繰り返しました。
そして、面接前日は全てのキーワードを集約させた 1つのマインドマップを作り、どのような角度からの質問が来ても、関連する単語を芋づる式に想起できるように心がけていました。
それでも、最後まで面接に対する緊張・恐怖は抜けず、前日は一睡もできないなど、コンディションは万全ではありませんでした。
面接当日の感触は漠然としたものだったものの、「やり切った」という気持ちから、共通テスト・2次試験勉強への切り替えは比較的スムーズだったと思います。

<入学後の生活>

2次試勉強も追い込み時期に差し掛かる2月14日、学校推薦型選抜合格者一覧の農学部の欄に自分の受験番号を見つけた時は、驚きの気持ちが大きかった記憶があります。
怒涛の入学・一人暮らしの準備を経て入学し、1セメスターを終えた今、少しずつ推薦生の制度を利用し、自分の学びを深めています。
農学部の場合、以下の2つの制度があります。

      
  1. アドバイザー教員制度
    生徒1人に農学部の教員1人が配属され、進路や専門的な学び に関する相談を行うことができる
  2.   
  3. 早期履修制度
    農学部専門科目の受講及び、単位認定が可能

私は1つ目の制度を利用し、担当教授の研究室で高校時代の内容から発展させた研究を行っています。
また、進振りに参加する必要がないため、単位の取りやすさではなく、自分の興味を軸に授業選択を行うことができる点もメリットだと思います。

一方、出願時に決定した学部を変更することができないため、高校生の間にしっかりと学部情報を吟味しなければなりません。
また、受ける授業は一般入試で入学した学生と全く同じであるものの、この点で東京大学独自の前期教養課程のシステムのメリット(※参照)を活かすことができない、という欠点もあります。
一般入試との両立も考えると、高校時代の負担はかなり大きくなってしまうでしょう。
※入学後に様々な授業を受けながら進学先学部を決めることができること、文転や理転も可能であること、など

推薦入試のメリット・デメリットはここに挙げたもの以外にもたくさんあります。
しかし、東大の特定の学部への進学を強く希望している方は推薦入試の受験を検討してみると良いと思います。
重要なことは、活動や実績の量・難易度ではなく、そこから何を学び、将来へどう活かしていきたいか、などの考えを自分の中に持っているかどうかです。
この文章を読み、自分には推薦入試が合っているかも、と感じた方は前向きに検討してみてください。
そして、そうでない方もこれを機に、推薦入試について興味を持っていただけると嬉しいです。