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生理の貧困と東大の取り組み
〜biscUiT対談特別企画〜

こんにちは!文科一類2年の大谷です。

今回は、東大での生理用品無料配布の取り組みについてご紹介します。
この取り組みに関連して、「東大女子が贈るフリーペーパーbiscUiT」(読み:ビスケット)から、 りんかさんとゆらさんのお二人にお越しいただき、対談をさせていただきました!
少し長くなってしまいましたが、せっかくの冬休み、 時間のあるときに読んでいただけると嬉しいです。

【目次】
◎はじめに
◎biscUiTと東大と生理
◎男性と生理
◎横と縦の連帯
◎読者の皆さんにメッセージ

◎はじめに

2022年10月から、東京大学教養学部と東大消費生活協同組合(生協)が連携して、 駒場キャンパス内女子トイレと多目的トイレの一部に 生理用品を設置する取り組みが始められています。

それと同時に、高校でいう「生徒会」のような学生団体である「教養学部学生自治会」が、 大学の取り組みで対象外となった女子トイレに加え、 男子トイレにも生理用品を設置しました。

自治会の働きかけの結果、現在、女子トイレはすべて大学側の取り組みに引き継がれ、 男子トイレは引き続き自治会の管轄となっています。

ただ、残念ながら今回の設置は期間限定のもので、 この期間に行われる利用調査によって今後も継続されるかどうかが決まるようです。

もちろん、設置された生理用品は誰でも自由に使用できて、とても便利です!
私個人としても、ぜひ設置期間が延長されることを願っています…!


ところで、学生自治会はこの取り組みを 「経済的障害の緩和及びジェンダー平等推進」のために始められたものとしています。

皆さんは「生理の貧困」をご存知でしょうか?
生理の貧困とは、お金がない、買うのが恥ずかしいなどの理由から、 十分な生理用品を入手することができない状態のことです。

「生理の貧困」に苦しむ人はもちろん、予想外の時期に生理が来たり、 持ってきた生理用品が足りなくなったりして、 生理用品を必要とする人は多いのではないでしょうか。

生理用品はトイレットペーパー同様、生活必需品ですよね。
生理用品が、必要とするすべての人に行き届くよう、 このような取り組みが東大でも始まっていることを、個人的にとても嬉しく思っています!

実はこれ以前からも、東大での生理の問題に関して、 取り組みを呼びかけるべく立ち上がっていた団体がありました。

「東大女子が贈るフリーペーパーbiscUiT」のVol.22(2021年10月発行)では、 東大女子の視点から、生理にまつわる種々の問題について特集が組まれています。
「biscUiT」は主に東大生向けのフリーペーパーですが、 こちらの記事はぜひ皆さんにも読んでいただきたい、熱の入った記事になっています。

あなたの知らない女の子のコト - biscUiT
↑こちらのリンクからぜひご覧ください!

今回は、この記事を担当されていた法学部4年生のりんか(以下:り)さんと 同じく法学部4年生のゆら(以下:ゆ)さんにお越しいただき、 生理の問題についてお話をうかがいました。

◎biscUiTと東大と生理

ー今日はお越しいただきありがとうございます!
まずは、生理について特集を組むことになった経緯を教えてください。


ゆ「22号で記事にしたいテーマについてグループに分かれて話し合ったのですが、 各グループでそれぞれ生理の話題が出ていました。
ちょうどスコットランドで生理用品を無償提供する法案が承認されて、 生理の貧困が話題になっていたのだと思います。

それに、生理を含めた性の話題が教育現場でタブーになっているのはなぜなのか知りたい、 こうした現状を変えたいという思いもありました。
生理についての基礎知識もみんなに共有できたら、 もっと生理について話しやすくなるんじゃないかなって」


り「biscUiTは『東大女子が贈る』フリーペーパーとして発行してきたので、 東大内でマイノリティである女子学生だからこそできる情報発信を、 東大生みんなに向けてしたいという思いがありました。

私のグループでは、ある子が 『休み時間の10分ってめっちゃ短くない? 生理の時は、トイレに行って教室移動したらそれだけで休み時間終わっちゃうよね』
と言っていたんです。
その時、こういうのって男子にはわからない悩みだ、 生理って男子からどういうふうに思われているんだろう、 自分たちにしかできない情報発信ができたら面白いよなあ、と考えました。

……本音を言うと、こんなにしんどいんだぞというのを知ってほしいというのも 個人的にはありました(笑)
現状の女子比率だと、声をあげなければ問題に見向きもしてもらえないのでは、と」


ー東大には男子校出身の学生も多いですが、 彼らは生理の問題を実際に知る機会がほとんどないのではと思います。
自治会も学部もやはり男性が多いとは思うのですが、 その中で実際に生理用品配布の取り組みが出てきたことは嬉しいですよね。


ゆ「実はインタビューの依頼を受けた時、 駒場キャンパスで生理用品が設置されていることを初めて知ったんですけど、 すごくびっくりしました。

こういう取り組みが欲しいよねと言っていても、 そこから実行に繋がっていない感じがしていたので、 結果的に実現する流れになってよかったなと思います」


ーしかし、この取り組みを実行した教養学部は駒場キャンパスにある学部なので、 本郷キャンパスではまだ取り組みがないんですよね。


り「そうなんです。私は法学部の4年生なので、 授業を受ける場所はもう本郷キャンパスになっているのですが、 駒場を卒業して本郷に行ってもやっぱり生理は来るじゃないですか(笑)
しかも本郷キャンパスは広いので、お腹痛いな〜と思いながら
遠くまで生理用品を買いに行かなきゃいけない。
実際私もそういうことが何回かあったので、ぜひ本郷にも置いて欲しいなと思います。」


ゆ「実行は学部の所管になるかもしれないけど、もっと大学全体が主導して、 連携してやっていかないといけないんじゃないかな、とも思います。
同じような問題意識を持っている人は学生団体にも学部にもいるはずなのに、 その一つ一つの点がバラバラで、線になっていない気がします」


り「biscUiTは記事を作るときにアンケートを取るのですが、 生理の特集記事のアンケートは特に回答数が多くて。
男性からも『応援してます』みたいなコメントがあったし、 性別に関わらず関心を持っている人が多いのかなと思います」


ー大学側も学生側も、年々ジェンダー関連の問題に関心が高まっている感じがしますよね。


ゆ「私はこの22号を発行したとき(2021年10月)くらいからずっと海外にいて、 最近戻ってきたんですけど、世界的に見ても 最近は以前よりずっと話題にしやすくなっている気がしますね」


ー今回の取り組みで、東大も一歩前に進んだような気がしました。


り「Twitterで初めて取り組みを知ったときは、結構びっくりしましたね」


ゆ「正直、東大がやってくれると思わなかった(笑)
こんなに簡単に、かつ唐突に始めるんだ、と思って」


り「逆にあっけなく感じるというか」


ーきっと、やろうと思えばすぐできるものなんですよね。


ゆ「そうそう。嬉しさもあり、苦味もあり……。
こんなに簡単にできることだったのに、って。
biscUiTとしては、変わってくれない世間や東大生、大学にもどかしさを感じて 記事を作っているところがあるので。
記事にも『東大にも生理用品を設置してほしい』ということを書いていました」


ーただ、今回の設置はあくまで期限が付いたもので、 現時点(2022年12月21日現在)では12月末までの取り組みとされています。


ゆ「私もそこが気になっていました。
調査の結果次第で今後も続くかどうかが決まるんだと思うけど……。
もし12月で終わってしまったら、これはbiscUiTも立ち上がらないと(笑)」


り「確かに。なんで入試のときまで置かないの、って思います。
準備してないけど来ちゃった時に、設置されているから大丈夫だ、ってなるかならないかで
だいぶ違う」


ゆ「ストレスや周りの環境で周期が変化することもあるけど、 何も考えずにトイレに行って、『あ、来てた!』ってなったら、 次の時間のテストは絶対集中できないもん」


ー150分以上座りっぱなしになりますし、 そんなに気軽にトイレに行ける状況じゃないですもんね。
なんとか入試の時まで設置を続けて欲しい!


◎男性と生理

ゆ「そういえば、自治会が男子トイレにも設置しているというのを見て、 はじめは『なんでだろう』と思ったけど、後から考えたら、使い道がある人もいるし、 ジェンダーマイノリティの人が使うかもしれないし、 絶対に使わないような人も、そこに生理用品が置いてあることで 生理の問題について考えるきっかけになるんじゃないかなって。
すごく良いなって思いました」


ー確かに。日常的にこれを使っていて、 こういうことで苦しんでいる人がいるんだっていうのを、 当たり前に感じてもらえるようになるんじゃないかなって、私も今思いました。


り「実物を見たことない人がほとんどだと思いますし」


ゆ「そういう意味では『これなんだろう』って開いて 見てもらうくらいがいいんじゃないかな(笑)
理由もなく自分から買うことは絶対ないし、あんまりできないだろうから」


ー東大の男子は、他の同年代と比べて生理への関心があるほうだと思いますか?


ゆ「どうだろう……。東大生だからこうっていうのは、特にない気がします。
でも、考えるのが好きで好奇心がある人が多いから、 話を聞いてもらいやすいのはあるかも。
もちろんそれも人によって違うけど」


ー生理の貧困の問題は、まだまだ賛否両論というか、 バックラッシュが強くなりがちな問題提起ですよね。


ゆ「これよりはあれを優先した方がとか、 これをするんだったらあれもしないと、っていう感じで 批判する人たちが結構いると思うんですけど。
どんなジェンダーの問題にも出てくることだけど、 女性を優先したいわけじゃなくて、平等にしたいだけ。
そういう不満とか困っていることがあるのなら、 それはそれでまた支援や解決をしたらいいのであって、 ひとつひとつ解決していこうっていう働きに対して、 そういう批判はするべきじゃないのでは、と思います」


◎横と縦の連帯

ゆ「これは、biscUiTが最近ジェンダー関連の話題に取り組んでいる
大きな理由の一つなんですけど。

将来、政策を考えたり企業の代表をしたりと、 意思決定をする立場になる人が多い東大生の中にも、 ジェンダーについて前近代的な考えだったり、 時代を逆行するような考えの人たちがいたりする。
(生理の問題を含む性教育が不十分だったり、学生の男女比が偏っていたりと)
教育システムや周りの環境が変わらないまま、 このままずっと卒業生を輩出していけば、また同じことの繰り返しで、 いつまで経っても社会は変わらないですよね。

だからこそ東大生に向けて (生理の問題や東大生の女子比率の問題など)こういうことを考えていかないとってことを、 強調している部分があります」


ー私たちpolarisも、まったく同じことを活動理念にしています!


り「そうですよね。
生理って自分の力で止められるものだと思っていたとか、 トイレで出すまで我慢できるものだと思っていたとか、 アンケートでそういうふうに書いてくれた人もいたんだけど、 そういう認識の人たちが、日本の法律を書いているかもって思うと、 すごく寒気がするなって(笑)」


ー性教育の問題などを改善していくためには、 その問題についてきちんと知ってもらうことが大切だと思うんです。
biscUiTさんの活動のように少数派が声を上げることは、 やっぱり意義があるんだなと、お二人のお話を聞いて改めて思いました。


ゆ「polarisのHPの活動目的を見たけど、本当に似てる。
学生間もそうだし、学生と大学もそうだけど、連携って本当に大事だなって改めて思います。
自分たちもpolarisのことは知っていたけど、 問題提起とか、どういう思いで活動しているのかまでは知らなかったので、 そういう同じような問題意識を持っている団体や個人が
もっとオープンに集まれる機会があればいいなと思いました。
一人一人だけでなく、大学の構成員全員で連帯していこうっていう意識がないと どうしても成果が出ない気がするので。
私たちは今日初めて会ったけど同じような意見を持っているし そういう人たちで集まって、少しでもできることがあればなあって」


り「東大内には女子比率に問題意識を持っている団体がいくつかあるんだけど そこ同士で連携できていないから、人手が足りなくて消耗しちゃったり。
大学側も女子比率の問題に取り組みたいって思っていて、学生側も活動をしているのに 横も縦もあまり連携できていないんですよね。
今まではそれが当たり前だと思っちゃってたけど……。
これからは自分たちが動いていきたいなと思いました」

◎読者の皆さんにメッセージ

り「私は中高生の時はすごく受動的で 自分の学校に女子が少ないのが当たり前になってしまっていました。
けど大学に入ってから、そこにいろいろな問題が隠れていることを
biscUiTの活動や授業を通して知ることができて、とても良かったなと思っています。
それを知らなかったら、そのまま社会の中で受動的に生きて 知らないうちに不利な立場になることもあっただろうと思うから。

そういう、自分が生きている社会に対して声をあげるという視点や 仲間たちと出会えたことがすごくよかったと思っています。
生理について優しくない大学なのかなとか、女子が少ないとか 心配はあるかもしれないけど、それが理由で志望校を目指すのをやめるんじゃなくて それを変えてやるぞくらいの気持ちでいてほしい。
というか、入学したらきっとそういう気持ちになると思います。
大学ってそういう場所だから」


ゆ「読者のみなさんが生理の問題をどういうふうに捉えているのかわからないけど もし知らなかったとしたら、こういう問題もあるんだなと知ってほしいです。
中高生は自分の勉強で忙しいと思うけど 大学生になったら、単純に知識を得るだけの勉強ではなく 実際に社会にある問題のことを考えていく段階に入るんだなと
感じてもらえればいいなと思います。

もしこの記事を見て問題に共感してくれたら 『自分の学校にも設置してほしい』とか
『保健の授業でこういう話をしていたっけ、していなかったっけ』とか 友達や先生に声をかけてみてほしいです。
世界を変えていくのは、色んな人たちが色んな場面でアクションを起こして 初めてできること。
もしこの問題について考えている人がいたら、ぜひ行動してみてほしいなと思います」


以上、今回は東大内での生理にまつわる取り組みについてご紹介し biscUiTからりんかさんとゆらさんにお話をうかがいました。

ご協力いただいた「東大女子が贈るフリーペーパーbiscUiT」からは 女子中高生向けの特別号も発行されています。
web上でバックナンバーを見ることができます。ぜひご覧ください!

大学での生理用品無料配布が今後も続くかどうかは学部次第ですが 今も大学内外でさまざまな取り組みが行われています。
皆さんの身の回りには、どのような取り組みがあるでしょうか?

生理は人類のおよそ半数が経験するものです。
もし苦しいこと、不便だなと思うことがあるとしたら 苦しんでいるのは絶対にあなただけではないはず。
どうしたらもっと良くしていけるのか、ぜひ周りの人に話してみてください。

みんなで協力して、生理期間を少しでも快適なものにしていきましょうね!