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冬休みは本を読んで過ごそう!東大生がおすすめする本!②

 こんにちは。教育学部4年のとみーです。
 寒くなってきましたね。
寒い冬は、やっぱり家におこもり生活になりがちです笑
そこで、「読書の秋」ならぬ「冬休みは本を読んで過ごそう!」と称して 前回から2回にわたって、 polarisメンバー(東大生)が中高生におすすめする本を紹介します。
今回が最終回です。

●『何者』朝井リョウ(文学・小説)
 理科1類1年のメンバーから「大学生になって「読んでおけば良かった!」と思ったから」との紹介です。
 就職活動を目前に控えた5人の大学生。
彼らは同じ目標に向かって互いに協力し合うことを誓うが、 やがて各々の虚栄や不安が入り混じり、 その人間模様は複雑な様相を呈するようになります。
企業によって自分の価値が判断される「就活」という体験の中で、 登場人物のさまざまな感情が交錯する様子が克明に描かれた、 朝井リョウの直木賞受賞作です。
 この本の最大の魅力は、 私たちが普段気づかない、あるいは気づこうとしない、 でも誰もが持っている人間の暗部を暴露してくれるところにあります。
就活という場面に限らず私たちは常に虚栄心を抱え、 他人に嫉妬し、悩みながら生きている。
その描写のあまりのリアルさに舌を巻くと同時に、 触れられたくない心の醜さを指摘された私たちは かなり手ひどく打ちのめされることになります。
しかし朝井リョウはただそれを指摘するだけではなく、 醜さを抱えながらも私たちは生きていけるという希望を与えてくれもします。
自分という人間を見つめ直すにはぴったりの一冊です。
(ただ本当に残酷と言って良いレベルで描写がリアルなので、 就活が身近に感じられる時期に読むとかなり精神的にこたえる可能性があるため、 中高時代に読んでおくのがおすすめです)

●『十角館の殺人』綾辻行人(文学・小説)
 理科1類1年のメンバーから「中高生時代に出会ってよかったから」との紹介です。
 孤島にある十角形の奇妙な館をとある大学のミステリ研の7人が訪れるが、 その館の建築家は半年前に自身の館で炎上死し、 その男が建てた館も全て呪われているという。
やがて7人を襲う連続殺人、 7人の他に誰もいない孤島で、 犯人はどこに。
そして7人のうち何人が生き残ることが出来るのでしょうか。
 近年書かれた推理小説の中で、 最も有名なシリーズと言っても過言では無い作品達の一作目で、 中高生にも読みやすく推理小説デビューにピッタリです。

●『受験脳の作り方』池谷裕二(実用・暮らし、教育)
理科2類1年のメンバーから「中高生時代に出会ってよかったから」との紹介です。
 東大薬学部卒の脳科学者による作品です。
脳科学の観点から、勉強の効率を高めるために必要なことがたくさん書いてあります。
受験を控えている人間にとってはもってこいの本です。
基本的には勉強の効率を上げるための本であると言って過言ではありません。
暗記をするタイミングはいつが良いのか。
勉強するときに部屋の様子がどのようであるのか、などなど。
受験勉強に役立ちそうな情報がたくさん詰まっているので、 大学受験を控えている高校生や、高校受験を控えている中学生に本当におすすめです。
また、勉強のための知識だけでなく、 記憶というものがどうやって形づくられるかや 飲食店で背景が赤色の店が多い理由など、 知って楽しめる知識も多いので、ぜひ読んでみてください。

●「落照の獄」『丕緒の⿃』小野不由美(文学・小説)
 文科1類から法学部へ内定した2年生が「中高生時代に出会ってよかったから」との紹介です。
 小野不由美さんの大人気シリーズ、 十二国記シリーズの短編集『丕緒の⿃』の中の1編です。
罪人は死して償うべきか。命の意味を問う、司法官・瑛庚の物語。
柳国を舞台に、司法官と連続殺人犯の闘いを描く物語。
罪なき人々を殺めた男に死刑を求める声が上がる。
だがそれもまた命を奪うことに外ならない――苦悩の末に瑛庚が下した決断とは。
特に法学部を目指す方におすすめします。
架空の国の司法制度に基づいたお話ですが、 現在の日本でも議論されている死刑制度の存続について考えさせられる1編です。
司法とは何を目指すべきなのか、刑罰はどうあるべきなのか、 そのような答えのない問いの一端に触れる経験ができます。
十二国記シリーズ自体が政治制度はどうあるべきかを主題にしている小説で、 巻数も多く内容も濃く読破は大変ですが、全巻おすすめです。

●『夢をかなえるゾウ』水野敬也(文学・小説、社会・ビジネス)
理科2類から工学部化学システム工学科へ内定した2年生が「中高生時代に出会ってよかったから」との紹介です。
 いつか自分自身を変えて「成功」したいという漠然とした夢を抱えつつも、 毎日普通のサラリーマンとして過ごしている主人公。
そんな主人公の前に突如現れたのは、ゾウの姿をした神様“ガネーシャ“。
ガネーシャは自分が変わるための一番簡単な方法を教えてくれるという。 ナポレオンにニュートン、孔子やビル・ゲイツにまで育てたことがあると言うガネーシャ。
そんなガネーシャから自分を変えるためだと言われて出される課題は、 「靴を磨く」「その日頑張れた自分をホメる」 といった簡単なものばかり。
本当にこの神様は自分のことを導いてくれるのだろうか。 胡散臭い神様とともに主人公が少しずつ変わっていく物語です。 
自分の本当にやりたいことが分からなかったり、 将来の進路が定まっていなかったりして、 漠然とした不安を持っている方には特におすすめです。
夢を見つけるために何か特別な才能は必要ない。
小さな積み重ねと後悔のないよう生きる心がけがあれば、 自分の人生はより良いものになっていくはずだし、 自分のやりたいことややりたいことを実現する手段も見えてくるはず。
そう思わせてくれる一冊です。

●『博士の愛した数式』小川洋子(文学・小説)
理科2類から工学部建築学科に内定した2年生が「中高生時代に出会ってよかったから」との紹介です。
「ぼくの記憶は80分しかもたない」という博士の背広に止められたメモ。
記憶が80分でリセットされてしまう博士と、 毎度「初対面」の家政婦の「私」、 そして「私」の息子ルートとが過ごす切なくもやさしい日々。
博士たちが繰り広げる数学の美しさと阪神タイガースの話にも注目です。
 第1回本屋大賞を受賞したということもあって、 題名は知っているという方も多いのではないでしょうか。
あまり長くなくて読みやすいながらも、 読後にはじんわり心があたたかくなるようなお話で、 私は何回読んでもボロボロ泣いてしまいます。
また、勉強していて「数学なんてもうやりたくない…証明問題とか何であるの…?」 となった時に読むと、 数学者が数学に魅了されてしまう理由や、 数学という世界の美しさをなんとなく垣間見ることができて 少しやる気が出るような気がします!

『読書について』ショウペンハウエル(教養)
文学部倫理学科4年生が「中高生時代に出会ってよかったから」との紹介です。
非常に悲観的な哲学で有名な、ドイツの哲学者ショーペンハウエルの本です。
彼はこの本で、読書をし過ぎることの危険性について警告しています。
彼によれば、読書とは「他人の頭にものを考えてもらうこと」であり、 読書ばかりしていると自分の頭で考える力がなくなってしまいます。
そのため本ばかり読むのではなく、 自分の頭で考える習慣をつけることで、 自分だけの価値観・哲学をつくり上げるのが大切だと彼は言います。
 真面目でよく本を読む中高生にこそ読んでもらいたい本です。
本を読むのはとても良いことですが、 本ばかり読んでいてもいけないということに気づいてもらいたいです。
また、この本はとても薄い本なので、初めて読む哲学書としてもオススメです。
もしこの本が気に入ったのなら、 同じ著者が書いた『幸福について』や『自殺について』も読んでみてください。

この冬、「暇だな〜」というときはぜひ本を読んで、 ちょっとした休憩 教養の蓄積 に役立ててくださいね♪
それではみなさん、よいお年をお迎えください!!