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インタビュー内容紹介

polarisの新企画 "Another Try! 〜東大女子の浪人体験記〜" 、第七回は文科3類1年のI.Y.さんにお話を伺いました。



都道府県:

熊本県

名前:

I.Y.さん

出身高校:

地方、中高一貫、私立

入学時の科類:

文科三類

文転からの東大志望

ー早速お話を伺っていこうと思います。まず、東大を志望した理由を教えてください。

私は両親がともに医療関係者であることもあり、実は中学までは医学部志望でした。でも、高1で自分に理科が合ってないと感じて、高1の文理選択で文系にしました。親は最初驚いていましたが、最終的には文系にすることを理解してくれました。
文系に決めたものの、親も私も文系の就職状況をよく知らなかったので、東大に行けばとりあえずなんとかなるのではという考えから東大を目指すようになりました。担任の先生が文科3類出身で、高2のとき「8割くらいの確率で現役で、1浪すれば確実に、東大に入れる」と言われたことも大きいですね。文系の中でも文科3類を選んだのは、同じ先生から経済も法も興味ないなら文科3類にするといいと言われたのと、あと入試の点数的に一番入りやすいかなと思ったからです。

ーということは浪人するかもという考えはあったということですか?

そうですね。現役のときは私立に出願しなかったし、後期も受けていませんでした。東大一本と決めていて、親もそれでいいと言ってくれていたので。実際浪人すると決めたときも親は「好きなようにしていいんじゃない」と言ってくれました。私の学校は浪人する人も少なくなかったので、学校の先生も1浪ならという感じでしたね。私立を受けるにはわざわざそのために上京して受けないといけないので負担が大きいのもあったし、東大の入試対策に追われていて、他の大学の入試の対策をする余裕がなかったというのもあります。他の大学に出願しないと決めたときから浪人の覚悟はありましたね。

ー同じ高校で東大志望の人はどのくらいいましたか?また浪人する仲間はいましたか?

その地域での進学校だったので東大志望の人は多かったですが、九州大学医学部の志望者の方が多かったですね。浪人する人も少なくなかった印象ですが、私の友達は結構現役で進学していきました……もともと男子校だったのが最近共学化したばかりで、女子が少なかったのもあると思いますが。

予備校寮での一人暮らし

ー塾や予備校には通っていましたか?

熊本から福岡の高校に通っていたんですが、地元には医学部進学系以外の大手の塾がなくて、現役のときは高3の5月から東進に通っていました。私の学校はGWに文化祭があって、それが高3にとって最後の行事だったので。それまでは定期テストの勉強くらいしかしていなかったですね。
浪人中はさすがに宅浪する勇気はなかったので、家を出て福岡の寮に入って河合塾に通っていました。

ー寮に入っていたのですね。

そうなんです。親元を離れて1人部屋だったのでかなりさびしかったです。勉強自体は嫌いではなかったし、成績も伸びている感触があったので勉強はしっかりできたのですが。友達との電話が息抜きでしたね。あと部屋にWi-Fiがなくて、テレビもなかったので、息抜きとしてラジオを聞いていました。他の人の笑い声を耳から入れると「ソロ充」できるんです。ラジオは通信料を食わないのもいいところですね。
寮には九州中から浪人したい人が集まってきていて、でも減っていっていました。寮が厳しいわけではないんですが、楽しいこともなかったので。寮の中での交流などもあまりなかったですね。

ー現役のときの後悔などはありますか。

現役というより数学がずっと苦手なままだったので、中高を通じて数学をもっとちゃんとやればよかったとは思いますね。テスト前じゃなくてもちゃんと勉強すればよかった。あとは二次試験の英語のリスニングをもっと早く始めればよかったかなあ。英語だけに限らないけど、勉強法の確立を早めにやれるとよかったなと思います。私は勉強法を確立できたのが秋模試のあととかだったので……先輩とかからおすすめの勉強法などをきいておけばよかったのかもしれないです。

ー浪人を経験してよかったこと・成長したと思うことなどはありますか。

「予備校に行って友達が増えた」ということはなかったですね……一番は東大に入れたことですけど、そうですね……1人で過ごす能力が高くなったかな。今も一人暮らしをしているんですけど、1人でもさびしくなく過ごすことができるようになったのはいいことですね。あとはラジオに出会えたことです。今ラジオが一番の趣味になっています。

コロナ禍での大学生活

ー東大に入って、大学生活はどうですか。新型コロナウイルスの影響でほとんどの授業がオンライン授業となり、なかなか予測のつかない状況でしたが……

Sセメスター(注1)の間は九州に帰っていました。自分的にはせっかく上京してきたから東京にいたかったけど、親も心配してたし見通しも立ってなかったし大学もオンラインだったし、東京にいる理由がなかったんですよね。1個下の弟も浪人して予備校の寮に入ったので親がさみしいだろうなと思ったのもありますね。

ー部活やサークルなどには入りましたか。

高3のときくらいから入ろうと思っていた部活に入りました。女子は少ないんですけど、東大生らしい人が多くて楽しいです。たぶんクラスだと趣味の話はあまりしないけど、部活だと周りがその趣味に理解があるからだと思います。週末に活動があってそこで人とかなり話せて友達が増えていいですね。

ー今後の目標・将来の夢などはありますか。

行きたい学部(注2)はまだ決まっていなくて……今現実的には文学部社会学科に行きたいと考えています。文学部なら大体なんでも興味があるし、点数的な話になっちゃうけど、社会学科は点数が高いからそこを狙っておけば文学部ならどこでもいけるかなって。教養学部後期課程は行きたいけど点数が足りないかも……
将来の夢としては、親にはまだ言ってないけど、地理が好きなのとラジオにはまったことからメディア系に興味があります。NHKのブラタモリみたいな地理の面白さを伝える制作に関わりたいと思ってます。一方で学生時代を長くしたいから大学院に行きたいとも思うけど、研究者としての素質が自分にあるとは思えなくて…親は大学院に行っても行かなくてもどっちでもいいよと言ってくれています。
短期的な目標なら本をたくさん読みたいですね。あと大学で美術論の授業をとっていてそれが面白かったので、春休みにいろんな美術館に行きたいです。

メッセージ

ー女子高校生・浪人生に向けて、メッセージをお願いします。

経済的な問題などもあるかもしれないけど、その大学に強いこだわりを持っていて、保護者の人が「浪人してもいい」と言ってくれるなら、親に感謝して浪人させてもらうというのは選択肢としてアリだと思います。実際、東大には浪人して入ってきた人も多いので。でも「浪人するから現役のときはそんなにがんばらなくていいや」という気持ちでいてほしくもないです。1年間の浪人は私にとっては本当につらくて、こんな泣いた1年はないというくらい泣いたけど、でも思わぬ趣味に出会えたし、今は楽しいし、その1年間の努力は報われたと感じることができたから、今東大を目指している人たちもがんばって東大に来てほしいですね。
あとメッセージとはちょっと違うかもしれないですけど……

ーなんでしょう?

私今ジェンダー論という授業をとっていて、その中で「男の子は浪人してでもいい大学にとか言われるけど、女の子は浪人させてもらえない」という問題があるという話が出てました。おそらくこの企画の主旨もそのあたりから出発してるのだろうと思いますけど、私は今までそれを実感してこなくて……周りにも確かに浪人しないように東大だけじゃなく滑り止めの大学も受けていた友達がいたのですけど、彼女たちはそもそも東大に強いこだわりを持っているわけじゃないから、浪人したくないという本人の意思で他の大学を受けていたのであって、親や社会からの「女の子だから浪人するな」という圧力によって滑り止めを受けていたわけではなかったと思うんですよね。でもこれは私が恵まれているケースだから感じることなのかもなとも思いますね。

ーありがとうございました!


注1:東京大学では2学期制がとられており、4月から7月までのSセメスターと9月から1月までのAセメスターにわかれています。


注2:東京大学には進学選択制度というものがあり、前期課程と呼ばれる1、2年生の成績によって、3、4年生の後期課程にどの学部に所属するかが決まります。こちらのリンク先(polarisの過去のメルマガ記事)に詳細な説明があります。