TOP > INTERVIEW > M.T.

インタビュー内容紹介

polarisの新企画 "Another Try! 〜東大女子の浪人体験記〜" 、第二回は法学部3年のM.T.さんにお話を伺いました。



都道府県:

埼玉県

名前:

M.T.さん

出身高校:

都内・中高一貫・女子校

入学時の科類:

文科三類(2018年度入学)

進学先:

法学部

中学、高校の部活:

(中高)ダンス部

バレエから東大へ

ーそれでは、早速お話を伺っていきたいと思います!まず、現役時代は東大を志望されていたのですか?

 はい。部活の先輩の影響で東大は身近に感じていました。また、先輩に声をかけていただき、東大の学園祭(五月祭)に行ったことで、 高一、高二の時から漠然とした東大への憧れはありました。高三の春に、そろそろ志望校を決めないとと思い、学校や塾の先生に後押しされて、 東大を志望し始めました。その時に先輩から色々な話を聞けたのは大きかったですね。

ーちなみに、現役時代は、どこの学部を志望していたのですか?

 教養学部(後期課程)です。私はクラシックバレエをやっていて、バレエを通じて幼い頃からフランスの歴史文化や政治にとても興味があったので、教養学科の地域文化研究分科に行きたいと思っていました。オープンキャンパスなどから、教養学部は東大でも特徴的な学部で、様々な分野の第一線で活躍されている研究者の方々が集まっていると感じ、特にフランス地域文化というスペシフィックな分野では最高の環境が整っているのでは、と考えていました。

ー大学進学前は法学部志望ではなかったんですね!志望学部を変えた理由については、後ほど伺っています!

浪人の決心

ー浪人を決めた理由はなんだったのでしょうか?

 現役の時は、浪人は考えていなかったんです。ですが、試験が不完全燃焼だったので、その気持ちのまま私立に行って後悔するのが嫌で。もう一度挑戦したい、と気持ちが変わりました。

ー浪人を決めたときに、周囲の反応はどのような感じでしたか?

 親には反対されたので、浪人したいという強い意思と1年間の勉強計画を伝え、説得しました。
 浪人することは一人で決めました。学校の先生にも特に相談しなかったし、周りの友達にも、浪人すると言ったらびっくりされました。

塾をとっかえひっかえ!?

ー高校時代はダンス部だったということですが、部活と勉強の両立なども大変だったと思います。現役時代の勉強はどのようにされていたのでしょうか?

 部活を引退したのが高二の冬でしたが、それまで学校の試験対策のみで受験に向けた勉強をほとんどしていなかったので、引退後は受験への切り替えがすぐにできず、気持ちばかり焦っていました。周りの子は高二のうちから受験勉強の準備をしていたと思います。スタートで遅れを取ってしまった私は、いかに効率よくみんなに追いつけるか、ばかり考えていて。
 それに、私の高校は受験勉強は自己責任という感じで、地理や歴史のカリキュラムが終わらないんです(笑)。

ーそれは大変ですね!学校で教わらないところは塾で補充していたんですか?

 はい。初めは英語だけ塾に行っていました。ですが、学校の勉強では足りないということで、周りでは全教科塾に通う子も多く、「この教科はここの塾がいい」とか、様々な情報が錯綜していました。それに翻弄され、高三の夏頃まで塾をコロコロ変えていて、勉強の方向性すら定まっていない、という状態でした。

ー塾をかなり変えた、と言うことですが、いくつくらい塾を変えたのでしょうか?

 英語は高二の春から卒業するまで同じ塾に通いました。数学は高三の春に塾に入りましたが、応用問題に特化した塾で数学が苦手な私にはレベルが合わなかったので夏に別の塾に変えました。同じ時期に世界史専門の塾にも入りましたが、私大対策を重視する塾だったのですぐやめてしまいました。地理・現代文は高三から東大受験向けの短期講習を受けていました。塾を変えていた時期は、「いい塾に行けば正しいやり方を教えてもらえる」と思っていたんです。でも高三の秋になって、やっとそれは違うと気付きました。東大入試といえど、基礎をコツコツやれば合格点に達するはずだということに気付いてから、秋・冬は目の前の勉強に集中することができ、センター試験と二次試験の直前模試でやっとA判定をとることができました。

ー急成長、という感じですね!現役時代は教科ごとに塾に入っていたということですが、浪人時代は違う塾に入ったんでしょうか。

 そうですね。今までの塾はやめて、東大受験コースのある大手の予備校に入りました。模試などの膨大なデータに基づいた、的確なアドバイスをもらえたので、安心感を持って勉強ができました。

浪人で興味が広がる?

ー大手塾ならではの魅力もあったんですね。予備校ではどんな勉強をされていたんですか?

 予備校の勉強は高校の延長のような感じでした。3、40人のクラス編成で、朝から夕方まで授業があり、授業後には自習室で勉強をしていました。クラスの人とはとても仲良くなれましたね。

ー高校時代とどんなところが大きく違うと思いましたか?

 高校の時は、周りの友達も違う塾に通っていたので、お互いが情報を共有する機会はあまり持てませんでした。一方、予備校で同じ目標に向かって勉強をしている友人は同志という感じで、些細なことでも不安を相談しあえました。ソウルメイトのような感じですね。

ー高校と予備校では友人関係も大きく変わるんですね。浪人時代、一年間受験勉強を続ける、と言うのは辛くはなかったですか?

 勉強をもう1年間続けることに関しては、淡々とこなすしかないと割り切っていましたし、高校時代の友人とご飯を食べるなど息抜きもしていたので、現役の時よりは辛くなかったと思います。現役時代に一周しているので、自分の苦手分野もわかっていて計画が立てやすく、自分のペースで勉強がしやすかったです。また、塾で定期的に受けられるセンター模試(現在の大学入試共通テスト)、東大模試をペースメーカーとして活用できたのも良かったと思います。
 成績も安定し、順調に来ていました。でも秋くらいになって不安になって。予備校のクラスの雰囲気もその頃から次第にナーバスになっていました。

ー成績が安定していても、不安になることはありますよね。そういう時にどうやってモチベーションを保っていたのですか?

 予備校は、過去問の添削や先生への質問制度などサポート体制が充実しているので、それらをちゃんと使うようにしていました。ただ予備校にいるだけだと、だれたりしんどくなっちゃったりするかもしれません。たくさんの人に関わって頂いたことは学習面だけでなく、精神的な面でも助けになったと思います。

ー苦手な科目はあったんですか?

 数学が苦手で足を引っ張っていたので、浪人時代は基礎からやり直そうと思いました。現役の時は基礎が固まっていないのに、応用問題ばかりに目が行ってしまって、基礎に立ち返る時間がもてなかったんです。でも最近の文系数学は易化する年もあり、数学を苦手なままにしておくと危険だと思ったので、数学を基礎から勉強して底上げを図りました。

ー予備校で面白かった授業などはありますか?

 私立対策として受けていた小論文の授業が面白かったですね。小論文の先生は、「比較的時間がある浪人生だからこそ社会のことを知って欲しいし、受験用の模範解答に倣うのではなく、自分の頭で社会問題について考えてほしい」と教える先生だったんです。高校時代は部活ばかりで余裕がなく、時事問題などについては関心が薄かったのですが、初めてその授業で法律、経済、政治の知識を得て、そのことが法律に興味を持つきっかけになったとも思います。

浪人を経て変化した夢に向かって

ー予備校時代の授業が今の専攻にも繋がってきているんですね!では、大学に合格されてからのお話を聞いてみたいと思います。地域文化から法律へと、興味のある分野が変化していますが、どのようなきっかけからなんでしょうか?

 1年生の時は後期教養学部志望でしたが、前期教養過程を経て、地域文化・人文系から、行政、特に文化行政により関心を抱くようになりました。
 例えば、日本にいながら毎月のように世界トップレベルのオペラやバレエのパフォーマンスがみられますが、それは日本の外交や文化庁による施策のおかげと分かり、では翻って日本は世界に文化を発信できているのか、と考えると、クールジャパン戦略などに多額の予算が投じられたにもかかわらず、まだまだ制度的に不十分なのではないかと思って。そのような理由で文化行政に携わりたいと思うようになり、法学部へ進学を決めました。
 その後2年生の夏に「東アジア文化都市」という文化庁によるプロジェクトのインターンに参加したのですが、そこでアーツアンドロー(芸術と法)の分野で活躍されている弁護士の方のお話を聞いたことでまた考えが変わってきました。弱い立場に置かれることが多いアーティストの権利を守るために、文化芸術の分野にもボトムアップのルール形成が必要だというお考えに感銘を受け、近年のインターネット普及によって権利侵害がより生じやすくなっている状況も相まって、実務家として働きたいと思うようになりました。

ーバレエを習ってきたこともあって、芸術に興味があるということですが、弁護士の中でも芸術関連の分野で働きたいと思っているのですか?

 そうですね。知的財産戦略や、著作権に関する仕事をしたいと考えています。そうした分野は法律学の中でも専門性の高い領域なので、法科大学院に進学してより深く学びたいと考えています。

ーかなり具体的な将来像を描かれているんですね!大学ではどのような勉強をされているんですか?

 学部の授業以外に、GLPという課外プログラム(Global Leadership Programの略。国際社会における指導的人材の育成を目的として、2014年度からスタートした、学部学生を対象とした特別教育プログラム)に参加していて、月に数回、英語でワークショップなどを行っています。今年はGLP制度を利用した短期留学が中止になってしまったので、在学中にヨーロッパへの短期留学にリベンジできることを願っています。
 また、比較的活動にゆとりのあるサークルにも複数所属しています。中高時代の部活のように、何かひとつに集中、という形ではないですね。

みなさんにメッセージ!!

ー勉強だけではなく、いろいろな体験をされているんですね!最後に、東大を目指す女子にメッセージをお願いします!

 まず、受験生全体に向けて。現役時の私のように近道を探そうと焦って、目の前のことに集中できないという状況に陥ってしまっている人がいたら、それはとても時間が勿体ないことだと思います。「学問に王道なし」と言われますが、迷わず、目の前のことを淡々とこなしていけば、高い目標であっても達成することができるはずです。私はそれに気が付くのが遅くて、現役の時は最後まで自分のやってきたことに自信を持つことができなかった。試験当日に、「自分はここまでやってきたんだから大丈夫」と思えるように、日々の積み重ねを大切にして欲しいと思います。
 次に、浪人生に向けて。秋から直前期にかけてナーバスになってしまうこともあると思いますが、それは当然のこと。周りの友人や塾のチューターさん、先生などに相談したり、積極的に添削などの指導を受けたりして、不安に負けることなく、そして過信することもなく、最後まで前向きに進んで欲しいと思います。
 東大は私がそうであったように、入学後も進路・将来について柔軟に対応してくれる懐の深い大学です。たくさんの夢をもつ多くの女子中高生に目指して欲しいなと思っています!

ーありがとうございました!