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インタビュー内容紹介

"Another Try! 〜東大女子の浪人体験記〜"第19回は、理科1類1年のA.K.さんにお話を伺いました。

都道府県:

福岡県

名前:

A.K.

学部:

理科1類

学年:

1年

"Another Try! 〜東大女子の浪人体験記〜"第19回は、理科1類1年のA.K.さんにお話を伺いました。

音楽がきっかけになった挑戦

ー早速お話を伺っていきたいと思います。大学進学についてはどのように考えていましたか?

3、4才くらいからピアノをやっていて、昔から絶対に音大に行くと思っていました。ただ、中学生の時に本当に大学で音楽の勉強をしたいのか?という疑問が出てきて、最終的に理系が好きだったので理系学部に行くことにしました。

ーその中で、東大を志望しようと思った理由を教えてください。

音大であればそこそこトップと言われる大学には行けただろうなと思ったので、変更するからには日本の中でも一流と言われるような大学に行きたかったというのが一番の理由です。あと、音大に行く時は必ず地元の福岡から東京に出る予定で、中心地の東京で学生時代を過ごすという経験はした方がいいんじゃないかと家族も私も考えていたので、東大に行きたいなと思いました。

ー現役時代の成績はどうでしたか?

判定はDか良くてCくらいしかなくて、センター試験も最終的に85%くらいでした。担任の先生が東大を受けて浪人した経験のある方で、受けることを勧めてくださって受けたんですけど、全然引っかからなかったですね。成績開示(注1)も40点くらい足りていませんでした。

注1:成績開示は、合格発表後に入試で取った点数が記載されたはがきが届き、自分の成績を確かめることができるシステムです。不合格の場合は、合格発表日の翌日頃に届きます。

ー東大に落ちたら浪人することは決めていましたか?

いえ、そんなに決めていませんでした。現役の時センター試験利用入試の理科大には合格して、私としては浪人したくなかったので気持ちが揺らいだんです。けれど、やっぱりそこを妥協するのは違うんじゃないかと思いました。逆に家族が予備校のチラシを持ってきたりと浪人を勧めてきて、私としてはもう大学生になってしまいたかったんですけど、家族の後押しで浪人を決めた感じですね。

ーご家族の方も応援してくれていたんですね。

そうですね。私は進学校出身ではなかったので、周りに東大を目指す人があまりいませんでした。地方の女子校ということもあったのかもしれないんですけど、東大目指すって言いにくい雰囲気も少しあって、本当に私が目指していいのかなとも思っていました。その中で、むしろ母が「受けるんじゃないの?」と、東大を受けることを想定してくれていたので、すごく背中を押してもらいました。

地元福岡での浪人時代

ー周りに浪人仲間はいましたか?

同じ学校から東大を受けた子が3人いました。全員だめで結局3人とも浪人したんですよね。同じ理1志望と文系にいて、ライバルというよりも一緒に頑張ろうって感じでした。やっぱり心強かったですね。中でも文系の子は浪人を迷っていた時にも色々話をして、浪人も同じ予備校でして、文理は違うのがまたちょうどいい関係で、最後まで一緒にいられたのがとても良かったです。周りに他にも東大を目指す人がいたっていうのは大きかったですね。

ー浪人中の1日の勉強スケジュールを教えてください。

朝9時から予備校の授業があって、朝が弱かったので早起きしてやったりはしていませんでした。授業が17時半くらいまでの日と19時くらいまでの日があったんですけど、コロナもあって自習室はあまり使わず割と家に帰っていました。帰ってご飯を食べてからは課題やもらった追加のプリントを解いていました。家では大体1、2時間くらいしか勉強していなかったと思います。あとは予備校とは別に現役の時からの数学の個別塾に行っていたので、そこでも勉強していましたが、あまり授業以外のことはしていなかったです。

ー浪人してからの成績はどうでしたか?

判定は大体AかBでした。 共通テストは最後は92%くらいで、 去年より5,60点上がりました。

ー現役時代より成績が伸びていますね。どんなことに力を入れて勉強しましたか?

そうですね。東京にある東大専門の予備校の先生が持っている特殊な問題を解くためのノウハウって、九州とか地方だとないんですよね。そういう人たちがなんとかするためには、基礎を身につけて共通テストでそこそこ取るのが一番大事なんじゃないかなと思いました。自分がほぼ共通テストのおかげで通ったって感じなので。地方の人でも東京で浪人している人が多いじゃないですか。私は浪人先が四谷学院なんですけど、予備校ではノウハウっていうより基礎力、色んな問題に当たるための能力の土台のところを強化したっていう感じでしたかね。

ー学校と予備校の授業は違いましたか?

そうですね。まず福岡の四谷で東大を目指す人が限られていて、集団授業と言っても一人とか二人でやってもらってたので、ほぼ全部個別指導みたいな感じでかなり違いました。全部自分の答案をベースに先生が授業して下さるので、ほぼ個別指導って感じでしたね。英語で文理合わさった時に9人ぐらいの授業があったんですけど、それでも少ないので、反応を見聞きしながら授業して下さる感じで、結構濃密でしたね。四谷はクラス授業の他に個別指導もあって、そこでは各教科を単元で55に割って、一個ずつ勉強してはテストを解いて、そのテストを先生に提出して個別に解説してもらうのをずっと繰り返していました。あんなに先生方に濃密に教えてもらったことは後にも先にもないかなっていうくらいやってもらいました。

合格に向けて突き進んだ1年間

ー浪人中どうやってモチベーションを保っていましたか?

2020年はコロナで最初5月までは対面授業がなくて、浪人生活は家で勉強だけというのは結構きつかったです。一年間やってみると同じ範囲にも新しい学びはあったんですけど、最初の何ヶ月かは前年と同じことを繰り返してる感じが強かったんです。なのでがむしゃらに勉強だけというより、朝から予備校の授業と課題、プラスアルファの演習をちょっとやったら、寝たり携帯触ったりしていました。息抜きしたり好きなもの見たりするのがモチベーションを保つ方法でしたかね。ただ、「こんなことしてて落ちたらどうしよう」とは思っていたので常にちょっとした危機感は持ち続けてました。ある意味モチベーションというか、やらなきゃという気分は上がっていたかもしれないです。

ー浪人していて心細かったり、しんどかったりした時はありましたか?

そうですね、夏くらいにもうこの生活を終わりたいという気持ちが強くなって、やっぱり1年間って長いなと思いました。7.8月が一番きつかったですね。9月に、8月に受けた東大模試の結果が来るじゃないですか。そこで成績がちょっと上がってたりとかして、もう一回モチベーション上がったんですけど、7、8月は「受験勉強をもうそろそろ終えたい」っていう気持ちがすごい強くて。そこからは9月になったら気づいたら出願があって、そのうち11月、12月になっててもう共通テストだってなって結構一瞬だったんですけど、やはり夏が長かったです。

ー逆に浪人して良かったこと、強みになったことはありますか?

勉強面では、高校時代の勉強では全然足りていなかったと思うので、どこの大学にしてももう一年ちゃんと学びを深めてから行けたのは良かったなと思います。それと、一つ乗り越えたなという感じはあります。自分の中で一年無駄だったとは絶対思わないです。きつい時期もあったけど、一つの目標を達成するためだけに生活するのは特殊な時間だと思うので、それを乗り越えられたというのは、成長に繋がったかなと思います。

ー現役時と浪人時で意識の違いはありましたか?

やっぱりこの一年は合格という目標のために勉強する、そのための一年なんだっていう意識は浪人してからの方が強かったです。学校生活がないから、より目標が明確というかそれしかないので、より絶対にやらなきゃいけないっていう気持ちはありました。

ー東大受験当日はどんな感じでしたか?

本番は特に普段と変わりなかったです。ここまで来たら色々考えず落ち着いて受ける以外ないなと思いました。

ー終わった後の手応えはどうでしたか?

数学が思ったよりできなくて、でも理科は割と解く順番とか問題の当たりとか色々うまくいって、総合してギリギリくらいかな?と思っていて、実際その通りでした。全然希望がないとも思わないし、確実だとも思えないしって感じでした。確実に受かると思っていた早稲田や慶應に落ちているので、行けると思っていても行けないかもしれないという気持ちはずっとありました。合格発表待ちの10日間くらいは生きた心地がしなかったです。

東大入学後

ー周りに浪人経験のある女子はいますか?

クラスの女子が6人なんですけど、3人浪人経験があって、それぞれ出身が東京、大阪、福岡です。一番最初の諸手続きの日に前後で並んでたのが大阪で浪人してた子で、地方から浪人してきた女子が他にもいるんだと思って、それが結構嬉しかったですね。

ー東大に入って良かったことはありますか?

地方だと人間関係が狭いので、東大の色んな人と出会えて交われる広さがすごく良いなと思います。あとは、周りにいる人たちがそれぞれ個性もあるし、色んなことに興味を持っていて、人間的に面白いなと思います。それから、教養学部は理系の授業ももちろんですけど、いわゆる一般教養的なものが充実していて、幅広い自分の興味に合わせた授業を取れるのは楽しいです。一年待ってでも、勉強を頑張って良かったなとは思っています。

ー将来の夢はありますか?

ずっと本当に真剣に音楽をやっていたので、自分にある特殊なものはやっぱり音楽だと思っていて。自分にしかないものを生かしたいので、将来的には音楽関係の技術の研究をしたいです。ただ音響系の研究が計数工学のところに入っていて、そこに行くにはかなり良い成績が必要(注2)なのでちょっと厳しそうなんですけど。音響の研究室に行くのではなくても、最終的に音楽系の技術に関われるような方向に進みたいと思っています。

注2:東大の進学選択制度では、成績順に志望する学部学科に振り分けられるので、人気の高い学部学科に行くためには良い成績を取る必要があります。

ー最後に東大を目指す女子高生、女子浪人生にメッセージをお願いします。

まず、ちょっとでも東大に行きたいと思ったら目指して欲しいと思います。最初は、自分が目指して良いのかなと思っていたのもあるんですけど、まず目指してみないことには絶対に行けることもないので、少しでも東大で学んでみたい気持ちがあったら、頑張って受けてみて欲しいです。やっぱり、行ってみたら開ける世界があると思うので。浪人はきついですし、その一年間はいいことばかりじゃないけど、一年やってもいいなっていう気持ちがちょっとでもあれば、やってみた方がいいと思います。一年やって無駄なことはないし、もしものことがあったとしても、その一年を乗り越えるのは他ではできない経験なので、ぜひ挑戦して下さい!

ーありがとうございました!