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インタビュー内容紹介

"Another Try! 〜東大女子の浪人体験記〜"第18回は、岡山県出身の法学部4年生、Cさんにお話を伺いました。



(合格発表日の様子)

都道府県:

岡山県

名前:

C

学部:

法学部

学年:

4年

高校:

公立・非中高一貫

"Another Try! 〜東大女子の浪人体験記〜"第18回は法学部4年のCさんにお話を伺いました。

岡山県での現役時代

ーまず現役時代の受験についてお聞きしたいと思います。現役の頃から東大志望でしたか?

はい。高2の終わりごろにやっと東大を第一志望に絞れて、そこからはずっと東大に向けて勉強していました。

ー身の周りに東大志望の方は多かったのでしょうか。

そこまでいなくて、学年で他に何人かいるかな、くらいでした。年によってはいなかったりもします。

ー岡山県のご出身ということで、上京して東大にいらっしゃったのですね。上京する方は身の回りにいらっしゃいましたか。

足を伸ばして関西までという人が多くて、東京までわざわざ大学進学のために足を伸ばす人は少なかったかなと思います。

ーその中で東大を目指そうと決められたきっかけは何だったのでしょう。

進学選択制度(注1)が決め手でした。私は高校の文理選択のタイミングですごく迷って、全然決まらなくて。文系と理系、どちらの授業・科目も好きだなあと思っていたので、なかなか絞れなかったんですよね。その時に学校の先生が、東京大学には進学選択制度があるんだよと言ってくださって。私はそこで初めて知ったんですけど、大学に入ってから学部学科を自由に選べるとか、1年生のうちは本当にどんな授業でも取れるとか、そういう自由の幅が広いところがすごく魅力的だなと思って、東大に惹かれていきました。

注1:東京大学では、1・2年(前期過程)は教養学部に所属して幅広い科目を学び、2年次の進学選択によって3・4年(後期過程)で所属する学部・学科を決める。詳しくはこちら

ー上京して東大を目指すことについて、ご家族の反応はいかがでしたか。

後から聞いたら正直寂しかったらしいのですが、当時はそんなことは言っていませんでした。すごく私の気持ちを汲んで応援してくれていたように、私からは映っていました。

ー当時から、浪人は視野に入っていましたか。

高3の時の模試の判定が正直ずっと悪くて、DやE、よくてCがちょこっとくらいの感じでずっと続いていたんです。夏くらいまでは絶対現役!と思っていたんですけど、秋頃から、頑張るけどダメだったら浪人するかな、と考え始めました。地元の国立大学への進学は考えていませんでした。それくらい進学選択制度が自分の中で魅力的だったんです。

ー現役時代の受験直後の手応えはどうでしたか。

う〜ん、という感じでした。模試の時よりも良いパフォーマンスがでないと落ちるなと思っていたんですが、模試の時より良い手応えがあったかというと全然そんなことはなく、いつもと同じ感じで。あ〜ダメだったかなあ、って思いました。

ー合格発表が出てから浪人すると決めるまではいかがでしたか。

結構心構えができていたというか、ダメだった感じが自分の中で大きかったので、受験直後から割とすぐに切り替えて、もう一年後のことを見据えていたかなと思います。

ー浪人について、ご家族の反応はいかがでしたか。

私がモヤモヤしていたり、ダメだったかなあと落ち込んでいたりしたので、あまり試験のことについては触れないでいてくれたかなと思います。親の方からツンツン言われることはありませんでした。浪人すると決めたらずっと応援していてくれて、ありがたかったなと思います。

ー身の回りの方で浪人されている方は多かったのでしょうか?

いえ、全然いなくて、学年で数人でした。基本的には皆、現役のうちに行けるところを探して行くという雰囲気の強い高校でした。

(駒場キャンパスの銀杏並木)

東京で寮暮らしの浪人時代

ー浪人時代は予備校に通ってらっしゃったんですか。

そうです。上京して予備校に通っていました。

ーそのタイミングで上京されたのですね。現役時代と変化が大きいと思うのですが、寂しいという気持ちはありましたか?

う〜ん、ありましたね!もう、ずっと泣いていました(笑)慣れない東京で、寮とはいえ一人暮らしで家族のいない生活をするってことが一番辛かったです。東京に初めて来て、満員電車で予備校に通うことになって1週間経った時にはもう、ストレスがすごくって。もう電車に乗りたくないという気持ちでいっぱいになった記憶があります。

ー満員電車、辛いですよね!予備校には女子はどのくらいいましたか?

東大よりは(注2)多かったかなあ。正確にはわかりませんが、そんなに少なくはありませんでした。半分以上は男性でしたが、女子が全然いないということはなかった気がします。

注2:2018年度東大入学者のうち、女子は約19%。(出典:東京大学「入学者数・志願者数」

ー東大を目指し続けて1年間頑張れた理由は何だったのでしょうか。

1つは、東大への憧れの気持ちがすごく大きかったというのがあります。気持ちが折れそうになったら、スマホの待ち受けにしていた東大のキャンパスの写真を見て、東大に行きたいから今ここにきているんだ、と思って頑張っていました。もう1つは、親への感謝の気持ちです。上京や浪人をする人が周りにそこまでいない中で、こんなに自分の考えを尊重して応援してくれているという環境が、すごくありがたいなと。せっかく来させてもらったんだからちゃんと恩返ししなきゃという気持ちが、自分のモチベーションになっていたと思います。

ー現役時代と浪人時代で、一番変化したことは何ですか。

模試の判定は変わりました。けれど、浪人時代の方がストレスを感じやすくなっていて、身体的にも精神的にも病んでいたと思います。長期間体調不良が続いた時期もありました。精神的な安定性は現役と浪人で大きく違ったと思います。

ーでは、浪人時代に一番成長したなと思うことは何ですか。

辛かった時期を踏ん張ってなんとか乗り越えられたことが成長だったかなと思います。二浪はしないと決めていたので、もうこれがラストチャンスだというプレッシャーと、ここまで親を振り回して自分勝手にやってきたのに、結果が出なかったらどうしようというプレッシャーで、本当に毎日辛かったんです。

ー寮から予備校に通ってらっしゃったんですよね。一日のスケジュールはどのような感じでしたか。

7時前に起きて、同じ予備校に通う寮の友達と朝ごはんを食べて、電車で予備校に通っていました。空きコマがあったら自習室で勉強して、19時半くらいまで自習室に残ってから寮で夜ご飯を食べて。そこからは自分の部屋で勉強するときもありましたが、寮の自習室で勉強する方が、仲間と一緒なのでモチベーションが高まりますし、気持ちも比較的安定しやすかったです。そこで22時くらいまで勉強して、24時くらいに寝る、といった感じでした。

ー寮は浪人生にとって良い環境だと思いますか。

私にとってはすごく良かったです。人によるかもしれませんが、浪人仲間を作るのはすごく大事かなと思います。

ー浪人時代の受験当日の手応えはいかがでしたか。

手応えは結構ありました。それに、一年間しんどいながらも頑張ったという自信だけはあったので、これでダメだったらもう納得がいくな、みたいな爽快感もありましたね。

ー合格を見たときの気持ちはいかがでしたか。

一番は安心感でした。嬉しいというよりは、よかったという感情が湧き出ましたね。

ー周囲の反応はいかがでしたか。

自分より喜んでくれた友達もいて、その反応につられてまた涙が出てきたり…。

(本郷キャンパスの銀杏並木)

東大入学後〜現在

ー憧れていたとおっしゃっていた、教養学部での学びはいかがでしたか。

この4年間を通して一番と言えるくらい、前期課程の教養は楽しかったです。

ー一番印象に残っている授業は何ですか?

美術論の授業です。私は絵を描くのが好きなのですが、仕事にするほどではないというか。絵は好きだけど、画家・絵本作家になるのかと言われるとそうではなくて、ささやかな趣味・興味としてずっと持っていたんです。この美術論という授業を取ることで、その小さな興味を満たせました。専攻するほどではないけど興味があるものを、授業をいろいろ取ることで楽しめたのはよかったなと思います。文系理系それぞれで幅のある授業が開講されているので、そこもありがたいなと思いましたね。

ー進学選択で法学部にすると決めたのはいつ頃でしたか。

2年生の春か夏くらいだと思います。

ーどうして法学部にしようと思ったのでしょうか。

前期教養で法学の授業をいくつか取っていたのですが、その時に、自分は本当に法律を知らなすぎるな、けど勉強してみると意外と面白いかも、と思えたんです。法学は、自分がこれまで意識を向けてこなかった領域だったので、法学部に入って勉強する環境に身をおいたら理解が深まるかなと思い、法学部を選びました。

ー進学選択は迷いましたか。

迷いました、すごく迷いました。学部ごとのガイダンスは一通り覗いていましたし、実際、法学部に決めたのも結構ギリギリでした。

ー実際に法学部に進学してみて、イメージと違うところなどありましたか。

法学部は2年生のSセメスター(春学期)から科目が開講されていて、法学部に進むなら取っておかなければいけない授業があるんです。その時に法学部の授業や雰囲気を知ることができたので、Aセメスター(秋学期)からいざ後期課程の授業が始まっても、あまりギャップは大きくありませんでした。

ー法学部に進んでよかったことは何ですか。

自分の考え方や思考法の面で成長できました。私は合理的・論理的に考えることが苦手なタイプで、それがコンプレックスだったのですが、法学はそういった思考が求められる学問だと入ってから感じました。試験はすごく大変でしたが、2年間で苦手な思考法を磨くことができ、自信もついたかなと思います。

ー4年生ということですが、今後の進路はいかがですか?就職されるのでしょうか。

そうですね。去年から就職活動をしていて、民間企業に就職します。

ー浪人時代の経験が就職活動に活かされたことはありましたか。

メンタルのコントロールですかね。浪人はさっき言ったとおり辛い時期がずっと続いていたんですが、就活も気持ちが沈んでいた時期がありました。そういう時の立て直し方、モチベーションの上げ方はちょっとは活きるところがあったのではないかと思います。

ーこれから就職した後に浪人経験が活かされることはありそうですか。

うーん、どうなんだろう。活かせる気はします。苦しい経験をしたからこそ、心が強くなったと思っているので、これから社会に出て、問題が直面した時に踏ん張る力がついたのではないかなと思います。

ー今改めて振り返ってみて、浪人したという経験をどのように思われますか。

よくやったなあ、と思います。受験戦争というすごく特殊な環境で、あれだけのプレッシャーとストレスを抱えながら、上京して、急に一人での暮らしになって…。頑張ったな、と思いますし、あの時の自分を褒めてあげたいなと思います。

ーこれから受験を控える高校生、浪人生に向け何かメッセージがあったらお願いします。

私が精神的に辛かった時期には、どうせ今年もダメかもしれないとか、このまま伸びなかったらどうしようとか、将来のことをすごくネガティブに考えて落ち込んでいました。もしそういう時期があったら、将来のことを考えたところで今すぐ変えることはできないので、今できることを考えて努力を続けて欲しいなと思います。そうしたらきっと、結果に結びつきます。しんどい時こそ今に集中して欲しいです。

ーCさん、貴重なお話をありがとうございました!