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インタビュー内容紹介

polarisの新企画 "Another Try! 〜東大女子の浪人体験記〜" 、第11回は、青森県出身の文学部3年生、M.K.さんにお話を伺いました。



都道府県:

青森県

名前:

M.K.さん

出身高校:

公立、非中高一貫

学部:

文学部

学年:

3年

担任の先生の勧め

ー浪人を決めた経緯とその周囲の反応について教えてください。

担任の先生が受験期の三者面談のときに、強引だとは思うのですが(笑)「もし落ちたら浪人をできるかできないかだけ答えてください、もしできるのであればした方が絶対いい」と自分や親に刷り込んでいてくれて。東大に落ちた時に別の大学も合格していたのですが、自分の受験期に悔いが残っていたというか、最後燃料切れして頑張りきれなかったなという自覚があったので、もう一回やろうと思って浪人を決めました。親に関しては、決めたなら頑張ってねという感じで前向きに応援してくれました。まわりは東大を目指すことがまず特殊だったから、友達とかは「まあ東大目指すんだもんね」という反応だったかな。唯一ちょっと否定的だったのは祖父母の世代で、「女の子なんだから(浪人しなくても)いいんじゃない」と言われて、テンプレートな反応だと思いましたね。

ー現役の時も東大を目指されてたんですね。

その時は学年で10人ぐらい受けて、現役では1人しか受からなくて。そして浪人を決めたのが2人しかいなかったから珍しいといえば珍しかったかもしれない。「おお、まだやるのか」という感じでした。

新しい土地での浪人生活

ー青森の高校を卒業して、名古屋で浪人をされていたと。

そうです。どこの塾にしようか考えた時に、先ほどの3年生の時の担任の先生が「実績のある河合塾か駿台がいい。国語が得意なら河合塾の国語の方がいい。」と言ってくれて、仙台で寮に入るという選択肢もあったんですが、父親がちょうど名古屋の河合塾に通えるぐらいの場所に単身赴任していて、結局いいタイミングだったし母も一緒にそっちに移ったので、浪人中は家族に支えてもらえる環境がありました。河合塾は名古屋が強いし、寮でひとりで頑張れる気がしなかったので、そこに通うことになりました。

ー新しい土地で塾に通い始めてみてどうでしたか。

これもラッキーだったんですけど、小学生の頃にも名古屋の方にいたから、小学生以来会っていなかった友達に夏くらいまでに2回ほど息抜きで会うとか、そういう時間も持てていました。一応浪人期にも少ないながら友達ができたのですが、そんなに仲良くならなかったから、友人関係で悩むよりはひとりで集中したほうがいいなっていう気持ちに切り替わっていて、なんやかんや意外とひとりでも勉強できていたかもしれない。

ー浪人の際は友達をモチベーションにしている人もいると聞きますが、ひとりで頑張られていた中で何かモチベーションの保ち方というものはありましたか。

家族との時間を持っていて、その支えが大きかったです。あとは勉強時間を決めていて、朝の9時から夜の9時までは勉強だけにして、9時に塾が閉まって10時ぐらいに家に着くから、家では全く勉強はせず、そこで切り替えるという感じでモチベーションを保ってました。あと暇な高校同期が病んだ時用の曲を一週間に1回ぐらい送ってきてくれて、それを聞いてました(笑)。

ー同じく浪人されているお友達ですか?

してなかったんですけど、いい曲あるよという感じでおすすめしてくれていて。

ー浪人の1年の中で一番しんどかったことは何ですか。

2月末に受験が終わって3月10日(注1)までめっちゃ遊んで、その後浪人ということになって最初あたりは、インスタなどで友達が「大学1年生〜」みたいに投稿しているのを見るとちょっとしんどかったなっていうのはあります。やっぱり東大諦めて普通の流れに乗って普通に大学1年生になればよかったかなって最初の方は結構思ったかもしれないです。そのうち夏の模試とか始まって「そうも言ってられないなー」となって勝手に切り替わったんですけど、最初の方の大学生活してるっていうオーラを浴びるときつかったです。

(注1)東大は毎年3月10日に合格発表がある

ーインスタなどは続けられてましたか。

そうですね、スマホの使用時間を見られるアプリを入れて、使っていい時間は使ってて。秋ぐらいからは全部アプリとかは消して……。でも私はニュースアプリで記事とか読んでたからあんまり意味なかったんですけど(笑)。一応後半は消してました。前半は時間を決めてって感じで。高1の時に東大生が学校に来てくれた時に、勉強は解きかけでやめて次始めやすくしたり、逆にスマホとかの遊び系は電源わざわざ落として、やり始めるのが億劫にすると良いと言われて、スマホの電源はよく切るようにしてました。

東大を目指して

ー次は志望校の決め方についてお聞きしたいのですが、現役の時に東大を目指し始めたきっかけや時期を教えてください。

はっきり目指し始めたのは高2の夏休み明けぐらいでした。高2の夏に福岡の山奥でサマースクールに行って、高校生がいろんな人の話聞いたり、お互いにディスカッションして政策立案したりしたんですけど、そこで偉い人が軒並み「もっと勉強したらよかった」と言っていて「そうなのか〜」と思いました。あと受験勉強を意識した時に、うちの高校は東北大学がトップで、学年に1人ぐらいが東大っていうような高校だったんですけど、私は地方の旧帝大だとそのままのペースで確実に入れて、めっちゃ頑張ればギリギリ東大入れるかもっていう成績だったから、頑張った方がいい経験になるかなと。そんなに他に出来ることもなかったし突き詰めてみようかなと思って東大を目指し始めました。

ーもし一浪して東大がダメだったら二浪は考えていましたか。

浪人生って初めてのどこにも所属してない感が不安というか、勉強やめたらニートじゃんっていうのはよく思ってたから、早くどこかに所属したいなっていう気持ちは若干芽生えてはいました。それが一浪で東大に行くぞっていうモチベにもなってたんですけど、二浪はちょっと怖かったかもしれないな。 父親も浪人してて一浪くらいならっていうムードが家族にはあって……。そんなこと言ったら親に怒られるかもしれないけど(笑)。金銭的・精神的な負担を考えたら多分厳しかったと思います。

ー受験勉強に対するスタンスは現役の時と浪人の時で変わりましたか。

結構変わったというか、変えました。天才的なセンスがないことは十分にわかったので、量で現役生を殴ろうと思って(笑)。基礎の問題もそうだし、過去問に関しては絶対浪人の方がアドバンテージがあると思ったから、コツコツ何周もやるっていう感じで量を意識するようにはなったかなと思います。後は集中力は上がったかもしれないです。頑張らなかったらあの落ちる感覚がまた来るぞという脅しが、落ちるのは想像してたよりもかなり効くので、集中できなくなった時とかはかなり減ったかなという感じです。あと現役の時は学校の先生の指針に従ってという感じでしたが、浪人の時の方が自分で計画立てたり、先生に聞きに行ったりとか、意識的に計画を立てていたような気がします。

ー自主的に勉強に取り組むようになったという感じですかね。

そんな気がします。現役の時は早く受験期終われーぐらいしか考えてなかったんですけど、浪人の時は今勉強するぞー!という気持ちになっていました。

浪人は気にすることではない?

ーでは次は東大に入った時のことを聞いていきたいと思うんですけど、東大に入って浪人経験がある女子は周りにいましたか。

文三はまず女の子も浪人も多いので、うちのクラスの女子の半分は浪人していました。最初は「浪人してる?」というのがオリ合宿(注2)の時の最初のワンクッションだったけど、そこからは別にだからどうこうとかはなくて、過ごしやすいクラスでした。あと普通に「浪人してます」と言うと、普通に現役で入ってる先輩、生まれ年は一緒の人とかからは「ああそうなんだ」で終わりだし、逆に浪人してる人に当たると「あーわかってるね」みたいな感じで(笑)。好感触なことはあっても特にマイナスなことはなかったです。

(注2)オリ合宿は「オリエンテーション合宿」の略。東大の1・2年生は高校と同様にクラスに分かれており、例年は3月下旬から4月上旬あたりにクラスごとに2年生が1年生を引率してクラスの親睦を深めるために小旅行に出かける。

ーネガティブに捉える人はそんなにない感じですかね。

多分東大の中だとそんなに珍しくないから、浪人する時は自分が地方出身で女子だったりするとそれこそ珍しいかもしれないけど、入っちゃえば意外と結構いるから紛れますね(笑)。

ー今文学部の社会学専修ということですが、もともとそこに行きたいと考えていたんですか。

あんまり考えないで東大に来て、これやりたいなと思って二択ぐらいで悩んでそこに決めた感じです。大学に入ってからの情報はあんまり持ってなくて、ただのイメージで…普通に底点(注3)も文3が一番低いということもあったし、法律に興味がなく、経済に興味がないのであれば文3ではないかという単純な思考で。今考えれば文1からの方が行きやすい学科、理転とか後期教養学部とか色々あるから考えて選んだ方がいいのかもしれないけど(笑)。

(注3)東大の進学選択は、成績順に希望する学科に進めるかどうかが決まる。底点とは、その学科に進学できる最低ラインのこと。

ー浪人という経験をして、今振り返って良かったな、ためになったなと思うことは何かありますか。

「自分が恵まれている」ということに自覚的になったということがあるかなと思います。それまででももちろん色んな人の支えなどがあって勉強させてもらってる環境にいたんですけど、浪人は割と親とかにもいろいろ負担してもらって、目標に向かって勉強できる環境を整えてもらってるというのが今までよりはっきり意識させられて、ありがたさというか、だからこそ頑張らなきゃいけないなと思ったりしました。高校ももちろんそうなんですけど。本当は現役で頑張りきって受かるのがいいと思うんですけど、自分はあまり頑張りきれなくて不合格というとても良くない現役の受験の終え方をしてしまったので、浪人をするか、しないかの選択権与えてもらった上で浪人をすることを選択して、頑張りきれなかった経験を塗り替えるということをさせてもらえて、今思っても頑張ったなって言える経験かなと思います。

ー最後に、女子高校生や女子浪人生に向けてメッセージをお願いします。

やっぱりよく言われてることですけど、東大にはいろんな人がいるし、勉強でもサークルでもやりたいことをとても一生懸命やっている人が多くてとても刺激的で、入ったらすごく楽しいので、自分が入ってるからっていうのもあるんですけど(笑)、東大をとてもお勧めします!応援しています。