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大学院進学

こんにちは。工学部4年のおちあいです。今回は大学院への進学についてです。東大は文系学部で約2割、理系学部で7割強ほどの人が大学院に進みます。僕もその多数派にもれず、この春から修士1年として大学院生になります。


大学での学部・学科は院ではそれぞれ研究科・専攻と名前が変わります。例えば私は現在工学部応用化学科に在籍していますが、大学院では工学系研究科応用化学専攻在籍になります。

その名の通り、大学院では授業を受けることよりも研究をして論文を執筆することが主な活動となります。


なぜ大学院に?

東大を含め、ほどんどの大学の理系学生は4年生になると講義の授業はほとんどなく、研究室という小さなコミュニティで生活します。

例えば応用化学科では、約50人の同期が8つの研究室に分かれて生活しており、4年生になってからは基本的に同じ研究室の人としか会いません。

学科全員で先生の話を聞く3年生までの授業とは異なり、研究室では自分に与えられた研究テーマについて仮説を立て、実験し、考察し、仮説の検証をする、というように自分だけの研究をすることになります。

僕はこの1年間の研究室生活を通して、ようやく研究の仕方や論文の書き方が分かってきたように感じます。しかし、これでやっと科学者のスタートラインに立ったようなもので、満足に研究をやりきったというにはまだまだです。学生としての研究を満足いくまでやりきるために、2年間集中して研究ができる修士に進むことを決意しました。


院試

大学院に進学するつもりだと言うと、よくこのように言われました。
「就活まだ先なんだ、楽だね!」
僕はこう返しました。
「その代わり入試の勉強をしないといけないんだよね。」
これに対しての反応第1位は「え?試験あるの!?」でした。


そうです!意外と知られていないかもしれませんが、大学院に進むためには入試(通称「院試」)があるのです。


次によく言われるのが「でも東大からだと内部進学だし受かりやすいんでしょ?」という言葉です。

これは半分正解、半分不正解です。


内部進学の利点

院試は専攻ごとに科目も配点も日程も全く違います。理系でも数学を受験しなくてよい学科があったり、筆記試験の配点よりも卒論や研究についての面接の方が配点が高い学科など様々です。

今回は僕の受けた応用化学専攻の院試を例に説明します。

試験は8月下旬の2日間で行われ、筆記試験(英語200点満点、化学600点満点)と面接(50点満点)です。内部(東大生)・外部(他大学生)関係なく全く同じ試験を受け、内部だからといって採点が優遇されることはありません。合計点と研究室の志望順位に応じて合否が決定します。


英語は東大院独自の試験ではなくTOEFLを受験します。当日受験するか、事前に個人で受験したものの得点を提出するか選ぶことができますが、いずれにせよTOEFLの問題集で対策することになるのでここでも内部・外部にハンデは生まれません。


面接は卒業研究の内容について5~10分ほど質問に答えるだけの簡単なもので、内部の利点としては知っている教授が面接官になることくらいです。


ではどこに内部の受かりやすいポイントがあるのでしょうか?

それはズバリ、化学です!

合否を左右するのは配点の7割近くを占める化学の出来ですが、内部はこの化学の勉強が非常にしやすいのです。


化学の試験は、学科の授業を担当している教授たちが毎年交代で作ります。教授たちは自分の授業で扱った内容を多く盛り込んで作るため、内部生の僕たちは授業のときに取ったノートを見ながら勉強すれば試験に出やすい範囲をカバーできるというわけです。
院試の要項には、東大で使っている教科書しか明記されていないため、外部生は莫大な試験範囲を勉強しなくてはなりません。

【何冊もある教科書のうちの一冊。上下巻で約1000ページ。教科書というよりまるで鈍器。】


情報戦

もう1点、内部生は各研究室の定員などの情報を持っている点で有利です。院試は単純に点数が高いからといって受かるわけではありません。
各研究室には定員が決まっており、点数が高い人から第1志望の研究室が見られて、枠が空いていれば合格、満員なら第2志望待ちになります。全員の第1志望が確認し終わったら、第2志望待ちの人の中で点数が高い順に第2志望が見られ、枠が空いていれば合格、満員なら第3志望待ちになります。これを全ての研究室の定員が埋まるまで繰り返すことにより合格者が確定します。
つまり、人気の研究室や定員の少ない研究室ばかり志望順位を高くすると、志望先が満員、満員の繰り返しで不合格になってしまいます。逆に言えば、極端な話、他の誰も第1志望に書かなかった研究室を第1志望にすれば合格できるということです(ただし、あまりに点が低いと無条件で不合格になります)。


各研究室の定員は公表されていないので内部生しか情報を持っていません。また、学科内で優秀な人がどの研究室を第1志望にしているのか知っていれば、その研究室を避けることで合格の可能性が上がります。院試ではこのような情報戦も大事になってきてしまうのです。

【合格者は大学内の掲示板に張り出されます。かなりドキドキしました。】


院死

院試の問題は難しく、外部からの受験者は半年以上かけて対策してくる人も少なくないそうです。一方、内部生は院試をなめてかかっている人も多く、平均で1ヶ月、短い人で1~2週間程度しか対策をしません。内部生の方が勉強しやすいとは言え、50人の定員に80人以上受験するため、試験に落ちる人も出てきます。僕の周りでは不合格になることを院死と呼んでいます。内部生でも8~10人に1人くらいは院死してしまい、院試浪人となります。
浪人して次の年の院試に合格すると当然枠を1つ奪うことになり、その分、新たな院死犠牲者が1人増えてしまうという悲しいループが存在します…。

世にも恐ろしい院死の話もありましたが、授業をまじめに受けて1ヶ月ほど集中して勉強すれば大抵の東大生は合格できます。
院では自分の研究に没頭できる他、研究室の経費で国際学会に海外出張できたり、自分の論文を学会で発表できたりと学部生ではなかなかできない経験をすることができるので、興味のある人はぜひ卒業後の進路として考えてみてください!


次回は就活についてです。お楽しみに!